胸腔鏡補助下胸管結紮術が奏効した外傷性乳糜胸を伴う多発外傷の1例
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概要
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症例は23歳の男性。既往歴に特記すべきことなし。作業中に約1トンの鉄鋼が胸腹部に落下して受傷し、当センターに救急搬送された。呼吸促迫と下顎呼吸のため気管挿管を行った。右上腕開放骨折からの外出血を圧迫止血し,急速輸液を行った。右気胸と左血気胸に対して胸腔ドレナージを行った。CTで脾損傷,腹腔内出血,両側肺挫傷,左鎖骨下動脈損傷(椎骨動脈分岐後閉塞)等を認めた。緊急開腹で脾摘を行った後,肺挫傷に対する人工呼吸管理を行った。左胸腔ドレーン排液は翌日漿液性となったが,第3病日に経腸栄養開始とともに白濁し,第4病日に胸水中の脂肪滴陽性,リンパ球優位の細胞数増加より乳糜胸と診断した。完全静脈栄養法としたが,第5病日の排液は4.4リットルで,第3病日(乳糜胸発症)2.4リットル,第4病日1.8リットルに比べてむしろ増加し,蛋白喪失による全身浮腫,肺酸素化能の悪化傾向を生じたため,保存的治療の限界と判断し,第6病日(乳糜胸発症後4日目)に右側臥位,分離換気の全身麻酔下,小開胸併用で胸腔鏡補助下に手術を行った。乳糜の漏出は左鎖骨下動脈損傷部に近接した胸管および分枝からで,同部と横隔膜上での胸管結紮術を行った。胸管結紮直後から乳糜の漏出は消失した。第104病日リハビリテーション病院に転院した。乳糜胸は胸管の損傷により発生するが,本症例のように非医原性外傷性乳糜胸は極めて稀である。乳糜の漏出が全身状態,呼吸状態に悪影響を及ぼす場合,発症後2日目に1日1リットル以上の乳糜の漏出がある場合は,早期に手術を考慮すべきである。術式としては胸腔鏡(補助)下胸管結紮術が有効と考えられる。
- 一般社団法人 日本救急医学会の論文
一般社団法人 日本救急医学会 | 論文
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