鈍的肝損傷を診断するために腹部造影CTを撮影する判断基準としてのAST及びALTのカットオフ値
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概要
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【目的】鈍的肝損傷を診断するために腹部造影CTを撮影する基準としてのASTとALTのカットオフ値を設定する。【方法】1993年1月より2006年4月までの間に帝京大学救命救急センターに搬送された鈍的外傷患者のうち,受傷後3時間以内に搬入され腹部造影CTが撮影された患者1,018例について患者記録から年齢,性別,AST,ALT,ISS,受傷機転,死亡の有無,CT上の肝損傷の有無,肝損傷が認められた場合は肝損傷に対する侵襲的な手技や開腹手術の有無について調査した。【結果】腹部造影CTが撮影された1,018例中CTにて肝損傷が認められたものは191例であった。肝損傷が認められた患者のAST,ALT,ISS,年齢の中央値は,それぞれ350 IU/l,261 IU/l,22,27歳であった。肝損傷が認められなかった患者のAST,ALT,ISS,年齢の中央値は,それぞれ55 IU/l,40 IU/l,17,35歳であった。肝損傷の有無とAST,ALT,ISS,年齢に関してMann-Whitneyの U 検定にて有意な差が認められた(p<0.001)。Receiver operating characteristic(ROC)曲線より肝損傷の有無に対するカットオフ値をAST 165.5 IU/l,ALT 130 IU/lに設定した場合に感度と特異度のバランスがよく,ASTに関しては感度88.0%,特異度83.0%,陽性的中率54.4%,陰性的中率96.8%,ROC曲線下面積(AUC)は0.920であった。ALTに関しては感度83.8%,特異度86.8%,陽性的中率59.5%,陰性的中率95.9%,AUC 0.928であった。CT上肝損傷があり,AST<165.5 IU/lかつALT<130 IU/lであった例は20例であった。このなかには肝損傷による死亡例は認められなかったが,1例が肝損傷に対して肝動脈塞栓術を受け,別の1例が肝損傷に関連して開腹手術を受けていた。【結論】ASTとALTの値は治療手技や開腹手術を必要とする重症鈍的肝損傷を除外する指標となる可能性がある。
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一般社団法人 日本救急医学会 | 論文
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