診断に難渋した急性腎盂腎炎による敗血症性ショックの3例
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概要
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症例1:68歳の女性。主訴は胸痛,呼吸困難。尿管結石にて入院中,突然の胸痛,呼吸困難を認めたため,当センターへ紹介となった。臨床症状や検査所見より急性心筋梗塞による心原性ショックを疑い冠動脈造影施行したが有意病変を指摘できず,左室造影にてタコツボ心筋症と診断した。尿管ステントの留置にてショックを離脱し得たため,急性腎盂腎炎による敗血症を契機に発症したタコツボ心筋症と診断した。ショックの原因は心原性ショックならびに敗血症性ショックが考えられた。症例2:63歳の女性。主訴は腹痛,嘔吐,下痢。感染性腸炎の診断にて入院中,ショック状態となり当センターに紹介された。腹部所見ならびにCTにて腹水貯留・腸管壁浮腫像がみられたことより消化管穿孔ないしは穿通による汎発性腹膜炎・敗血症性ショックを疑い,試験開腹術を施行した。腹膜炎の所見は認められず,後腹膜の浮腫,右腎腫大を認めた。病理解剖所見より急性腎盂腎炎,腎膿瘍に伴う敗血症性ショックと診断した。症例3:82歳の女性。主訴は意識障害,腹痛。CT所見から急性閉塞性化膿性胆管炎または急性腎盂腎炎による敗血症性ショックを疑った。腹部所見を伴っていたことから,化膿性胆管炎を疑い内視鏡的経鼻胆道ドレナージを行った。続いて尿管ステントを留置し,ショックを離脱した。胆汁培養が陰性であり,尿培養結果と血液培養結果が<I>Escherichia coli</I>(<I>E. coli</I>)にて一致したため,急性腎盂腎炎による敗血症性ショックと診断した。今回の3症例では症状,検査所見からショックの原因として,他の致死的疾患が強く疑われたこと,更に症状,検査所見が急性腎盂腎炎を強く示唆しない所見であったことから診断に難渋した。敗血症性ショックの診察にあたって,非典型的な症状や検査所見であっても急性腎盂腎炎の可能性が存在する場合には,積極的に診断的治療目的の尿路ドレナージを考慮することが肝要と思われた。
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一般社団法人 日本救急医学会 | 論文
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