中結腸動脈瘤破裂により発症したSegmental arterial mediolysis(SAM)の1例
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概要
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Segmental arterial mediolysis(SAM)は腹部内臓動脈瘤の成因の一つとして近年確立された概念である。急性腹症や出血性ショックで発症することが多く,腹部内臓動脈に数珠状の動脈瘤が多発し,冠動脈や頭蓋内に動脈瘤を合併することも報告されている。病理組織学的に確定診断された報告(会議録は除く)は自験例を含み本邦23例と比較的稀な疾患である。症例は83歳の男性。心窩部痛にて他院入院中に,突然の意識障害とショック症状を呈し当院救命救急センターにドクターヘリ搬送となった。搬送中に心肺停止(心静止)となったが急速輸液及び心肺蘇生により 4 分後に心拍再開し当院に到着した。来院時の循環動態は安定していたため,腹部造影CT検査を施行したところ腹腔内に多量の液体貯留を認め,緊急血管造影を行った。下腸間膜動脈造影にて脾彎曲部に造影剤の血管外漏出所見を認め,脾動脈には数珠状の不整な拡張を認めた。以上からSAMを強く疑ったが,腸管虚血を考慮して緊急開腹手術へ移行した。術中所見では中結腸動脈左枝に出血を伴う動脈瘤の形成を認め,動脈瘤切除を施行した。病理組織学的検査にて,動脈瘤壁に島状の中膜残存所見を認めSAMと確定診断した。術後経過は良好で,第33病日に転院となった。術後 2 年に施行した腹部CT検査で未治療の脾動脈・下腸間膜動脈の数珠状変化はほぼ消失しており,現在まで破裂することなく 2 年 4 か月が経過している。原因不明の腹部内臓動脈瘤に対してはSAMを鑑別疾患の一つとして念頭に置く必要があると考えられた。
- 一般社団法人 日本救急医学会の論文
一般社団法人 日本救急医学会 | 論文
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