敗血症性ショックに陥ったESBL(extended‐spectrum β‐lactamase)産生大腸菌による急性前立腺炎の1例
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概要
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近年肺炎桿菌や大腸菌における基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(extended-spectrum β-lactamase; ESBL)産生菌の分離頻度が増加しつつあり,第 3 世代セフェムが無効な新たな耐性菌として問題になっている。我々は,敗血症性ショックに陥ったESBL産生大腸菌による急性前立腺炎の 1 例を経験したので文献的考察を加えて報告する。症例は50歳,男性。 3 年前に急性前立腺炎の治療を受けていた。発熱,頻尿,会陰部痛が出現し当院泌尿器科外来受診し,急性前立腺炎と診断されレボフロキサシンが開始された。帰宅後も残尿感が持続し,同日夕方に昏睡状態かつショック状態に陥っているところを発見され当院へ救急搬送された。敗血症性ショックに対して大量輸液,ドパミン投与,相対的副腎不全に対するステロイド補充療法及び持続的血液ろ過透析を開始した。抗生物質は前回に検出された大腸菌がレボフロキサシンに耐性であったのでイミペネム/シラスタチンを選択した。多臓器障害として肝障害,腎障害,播種性血管内凝固障害を認めたが,いずれも軽快し第12病日退院となった。後日,血液培養から大腸菌が検出され,レボフロキサシンにも耐性を示すESBL産生大腸菌であることが国立感染症研究所での遺伝子解析にて判明した。経口投与可能な抗生物質で感受性が認められたのはファロペネムナトリウム(以下FRPM),スルファメトキサゾール・トリメトプリム(ST合剤)の 2 剤のみであったので,FRPMを継続投与し外来通院へ引き継いだ。今後,グラム陰性菌を考慮した抗生物質を開始する場合には,ESBL産生菌が起炎菌である可能性も考慮し,重症例の場合は第一選択としてカルバペネム系抗生物質を選択するべきである。
- 一般社団法人 日本救急医学会の論文
一般社団法人 日本救急医学会 | 論文
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