ドクターカーによる病院前医療の有用性に関する検討
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概要
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病院前医療を担う前方型ドクターカーシステムの有用性は確立されているとはいえない。大都市中心部の3次救急施設として, 前方型ドクターカーを運用し, 119番通報段階での重症患者抽出方法と現場医療の有用性, 安全性, 問題点を明らかとして, 課題を抽出した。119番通報内容から脳血管障害, 急性冠症候群, 重症外傷の3病態を抽出するためのフローチャートを作成し, ドクターカー派遣システムを構築してのべ87日間運用した。派遣症例94例を検討対象とした。119番通報覚知から救急隊, ドクターカー現着までの時間はそれぞれ4.88±0.20分 (n=74), 10.01±0.53分 (n=90) で, 救急隊現場活動時間の平均は13.37±0.66分 (n=73), 119番通報覚知からセンター収容までの平均時間は23.22±0.86分 (n=60) であった。通報表現から推定された脳血管障害42例, 急性冠症候群13例中で実際に中枢神経系, 心血管系の異常が判定されたものはそれぞれ42.5%, 61.5%であった。3次救急適応患者の割合は, 約10%であった。派遣医療班による医療行為は23例 (24.5%) に施行され, 3例は病態に即した病院前医療と評価された。現場医療施行群と非施行群の救急隊現場活動時間の平均はそれぞれ13.78±1.04分と13.18±0.85分で有意差はなかった。接触時重症18例のうち, 現場治療がなされなかった10例の現場からの平均搬送時間は1.49分であった。今回のドクターカー派遣システムにおいて, 時間的な不利益はなく, 設定されたフローチャートも適切と考えられたが, 大都市圏においては, 現場医療の有用性には搬送所要時間が大きく関連し, 有効性の高い適切な患者抽出が重要である。また, 最終的な重症的中率は約10%であり, 90%近い, いわゆるオーバートリアージを許容できる対応能力が必要で, 自治体全体でシステム構築に取り組む必要がある。
- 一般社団法人 日本救急医学会の論文
一般社団法人 日本救急医学会 | 論文
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