電解中性水の根管洗浄への応用
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概要
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根管洗浄には3~10%次亜塩素酸ナトリウム溶液と3%過酸化水素水(オキシドール)の併用が一般的である.しかし,急性歯根膜炎には使用が適切ではなく,誤滴下による軟組織や衣類への影響が危惧される.本研究においては,薬品に代わる方法として,電解中性水による有効な根管洗浄処理条件の具体化を目的とした.中性水が生体や環境にほとんど影響を示さず,優れた殺菌効果を有することはすでに報告している.<BR><I>Staphylococcus aureus</I> 209Pあるいは<I>Streptococcus mutans</I>を感染させた単根管の感染根管歯を作製した.中性水あるいは薬液(10%NaClOおよびオキシドール)による1分間洗浄後,根管に残存する生菌数を調べた.1分間の薬液によるシリンジ洗浄でいずれの菌も完全に除菌できた.中性水によるシリンジ洗浄では,3個のサンプルのうち1個で生菌の残存がわずかにあった.試験管内では,中性水との混合ですべての菌が短時間で除菌できたが,根管内は有機物との接触による有効成分である残留塩素の濃度低下が殺菌効果を弱めた.しかし,残存生菌数は,統計学的には薬液洗浄と有意差はなかった.中性水による超音波洗浄では消毒効果がさらに高く,<I>Streptococcus mutans</I>はわずかな菌の残存があったが<I>Staphylococcus aureus</I> 209Pについては生菌が検出されなかった.著者らが開発した中性水ジェルは,塩素濃度が高く根管内に停留しやすいためより高い消毒効果を示した.中性水での根管洗浄後のジェル貼付は感染根管に対して100%の消毒効果を示した.根管洗浄後,次回の処置まで根管内に封入したジェルの殺菌作用により菌の増殖や新たな菌の侵入を防ぐ効果が期待される.<BR>薬液(NaClO)中で動的浸漬を行うと,象牙質表面は浸漬初期から光沢の損失,白色化および体積減少がみられたが,中性水およびジェル中では変化はなかった.以上の結果から,中性水および中性水ジェルの併用は副作用がなく,消毒効果と予後の維持,生物学的安全性,操作性など種々の観点から,薬液に代わる根管処理液として有用であることが示唆された.
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