第VIII因子インヒビターを生じた非血友病の3症例
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概要
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非血友病症例で,ときに第VIII因子に対するインヒビターを生じ,重篤な出血症状を呈することがある。われわれは,過去1年間に,新たに3名の非血友病第VIII因子インヒビター症例を経験したので,ここにその3例の臨床経過およびインヒビターの性状について報告する。症例1は,69歳男性。早期胃癌にて部分胃切除施行。経過は良好であったが,術後1カ月して,吐・下血,筋肉内出血などの出血傾向出現。その時,術前正常であったaPTT (activated partial thromboplastin time)が著明に延長。第VIII因子活性は,3%であった。症例2は,生来健康であった78歳女性。数日前から出現した全身の皮下出血を主訴に入院。aPTTの著明な延長を認め,第VIII因子活性は,1%であった。症例3は,30歳男性。交通事故による左胸腔内出血,肝挫傷にて入院。胸,腹腔ドレナージなどの処置施行。入院2カ月後,ドレーン部の血腫形成などの出血傾向を認めるようになり,この時入院時正常であったaPTTが延長し,第VIII因子活性は,5%であった。それぞれの第VIII因子インヒビターの力価は,症例1は,78 BU/ml, 症例2は,870 BU/ml, 症例3は,0.5 BU/mlであった。ELISA法による抗体のサブクラスの検討では,症例1は,IgG1, 4に,症例2は,IgG2, 4(優位)に,症例3は,IgG4に属していた。さらに,症例2の抗体は第VIII因子のL鎖を認識していた。症例1, 3は,ステロイド投与により軽快したが,症例2は,メチルプレドニゾロンパルス療法などの免疫抑制療法なども行ったが,腹腔内出血にて死亡した。以上,低力価のインヒビター症例では,副腎皮質ステロイドなどの投与により軽快したが,一方,高力価のインヒビター症例は,治療抵抗性で予後不良であり,血漿交換やバイパス療法などを含めたより積極的な治療が必要であったと考えられた。
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一般社団法人 日本血液学会 | 論文
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