All-trans retinoic acid投与中に広範な脳梗塞を生じた急性前骨髄球性白血病
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概要
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症例は27歳女性。1992年9月,妊娠6カ月で子宮内胎児死亡。以後発熱,出血傾向が出現し当院を受診した。末梢血所見は白血球数3,200/μl(前骨髄球80%)で,貧血,血小板減少,DICの所見が認められた。骨髄は前骨髄球が90%を占め,急性前骨髄球性白血病(APL)と診断した。抗凝固剤とall-trans retinoic acid (ATRA) 70 mg/日の投与を開始し,凝固能は改善したが,治療4日目に右上下肢片麻痺,失語となり,頭部CT所見から脳梗塞と考えられた。脳浮腫が進行し治療9日目に昏睡状態となったが,治療20日ごろより意識レベルは回復した。ATRAの投与後,APL細胞の分化傾向が認められたが,白血球数が治療9日目に急激に上昇したため化学療法を併用し,完全寛解が得られた。ATRAはAPL細胞の分化を誘導し,凝固能の改善効果を有するが,一部に塞栓症や頭蓋内圧亢進を生じたとの報告もみられる。本症例はATRAによる治療を進める上で示唆に富む点が多く興味深い症例と考えられたため報告した。
- 一般社団法人 日本血液学会の論文
一般社団法人 日本血液学会 | 論文
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