急性妊娠性脂肪肝に急性膵炎を合併した一症例
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概要
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症例は35歳の女性で切迫早産にて当院産科に入院中であった.妊娠35週6日から急に全身倦怠感と上腹部痛が出現して,急性肝不全,播種性血管内凝固症候群(DIC)の徴候が認められた.腹部超音波検査ではbright liverではなかったが,急性妊娠性脂肪肝と診断されて同日緊急帝王切開術が施行された.しかし,翌日左上腹部痛が増強し,アミラーゼの急上昇が認められた.腹部CTでは膵全体の腫大と膵周辺への炎症の波及が認められた.予後因子3点を満たしたので重症急性膵炎と診断された.保存的治療の経過は良好であり,膵炎診断後18日後には軽快退院となった. 本症例は妊娠時急性膵炎の成因となりうる著明な高脂血症は認められなかった.急性妊娠性脂肪肝は腹腔動脈の攣縮が原因とされる.本症例で合併した急性膵炎も膵臓の栄養動脈の血管攣縮による膵虚血が成因の一つとして考察された.
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日本膵臓学会 | 論文
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