異物型肉芽組織による主膵管狭窄の一例
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概要
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症例は62歳,男性.健康診断で血清エラスターゼ高値を指摘され,前医にて精査を行った.腹部CT,MRIにて膵内に明らかな腫瘤性病変を指摘しえなかったが,EUSで膵体尾部に境界不明瞭な12mm大の低エコー病変を認め,ERPで膵尾部に主膵管の不整な狭窄像および同部の分枝膵管の拡張像を認めた.これらの所見から膵癌の可能性を否定することができないと判断され当科紹介となった.平成20年2月,膵体尾部切除術を施行した.切除標本の病理組織学的所見では悪性所見を認めず,病変部位では,主膵管に接するようにHE染色で好酸性を示しPAS染色強陽性の膜状異物とそれを貪食する多核巨細胞を認めた.これらにより強い線維化を伴う肉芽組織の形成を認めた.PAS陽性の異物の存在は寄生虫による成因を示唆したが,切除標本からは虫体の証明はできなかった.寄生虫の関与が疑われる膵疾患は稀ながら報告例があり,膵悪性疾患の鑑別診断対象として挙げられるべきと考えられた.
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日本膵臓学会 | 論文
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