急速な経過をたどった膵未分化癌の1例
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概要
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42歳,男性の膵未分化癌の1例を経験した.主訴は左腰背部痛,腹部膨満感であった.血液学的検査ではDupan II, Span I, エラスターゼIが上昇していた.上腹部Computed Tomography(CT)像にて膵尾部に低吸収域な腫瘍を,上腹部エコーにて低エコー性腫瘍を認め,また内視鏡的逆行性胆道膵管造影(endoscopic retrograde cholangiopancreatography;ERCP)では膵管の狭窄,不整は認めず,腹部血管造影では腫瘍は脾動脈,中結腸動脈,下結腸動脈から栄養されていた.以上の画像診断,血液検査から通常の浸潤性膵管癌とは異なる疾患と推測された.手術時所見では胃背側部,横行結腸に浸潤する巨大腫瘍を認め,血性腹水を伴った腹膜播種が存在し切除不能であった. 術中に摘出した転移リンパ節の病理組織学的検査により膵由来の低分化型腺癌と診断し,また免疫組織化学的検索ではcytokeratin 7,20,epithelial membrane antigen(EMA),vimentin,M-actin,S-100は陽性であった.以上の所見より本腫瘍は膵原発未分化癌と診断した.なお自験例は術後化学療法を施行したが術後23日目に肝不全にて死亡した.本疾患は膵腫瘍の中では比較的稀であるが,腫瘍径が小さければ外科的切除を施行し,放射線療法,化学療法を積極的に行うべきである.今回のように巨大な腫瘍では切除不能例が多く,放射線治療,化学療法を含めた治療が必要と考えられた.
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日本膵臓学会 | 論文
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