血管内治療における穿刺部トラブル症例の検討:―合併症回避のための方策―
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
要旨:【目的】血管内治療(以下IVR)における穿刺部トラブルにより,当科に緊急搬送された症例に対する治療を通じ,合併症回避の方策を検討した.【症例】2009 年9 月から2011 年9 月までの2 年間で,頭頸部領域のIVR 後穿刺部トラブルにより6 名の症例が当科に緊急搬送された.年齢は,15~87 歳.男性4 例,女性2例.頸動脈狭窄に対するステント留置5 例,脳血管奇形に対するコイル塞栓が1 例であった.【結果】全例,穿刺部は右鼠径部であり,仮性動脈瘤形成が4 例(感染1 例),総大腿動脈閉塞による下肢虚血が2 例であった.当院搬送までの期間は2~10 日であった.超音波検査,CT 施行後,緊急手術を行ったが,仮性動脈瘤4 例の穿刺部位は浅大腿動脈であり,同部からの出血が認められた.3 例で穿刺部縫合止血術,2 例で自家静脈片を用いたパッチ血管形成術(血栓摘除追加1 例),1 例で自家静脈を用いた血行再建術を行った.1 例で,術後腓骨神経麻痺による歩行障害を認めたが,他の5 例では機能障害は残らなかった.【結論】鼠径部穿刺のトラブルでは,急性動脈閉塞や仮性動脈瘤に感染が合併すると,血行再建が困難となり,下肢大切断に至る場合もある.総大腿動脈を確実に穿刺するために,超音波検査,CT による,総大腿動脈,浅大腿動脈,大腿深動脈の術前mapping が重要である.さらに,IVR 終了後,止血デバイスに安易に頼ることなく,圧迫止血に十分留意するとともに,総大腿動脈の血管径が5 mm 未満や壁肥厚,石灰化が著明な症例では,経皮的穿刺に固執せず,大腿動脈を露出して直視下の穿刺を考慮することが,合併症回避には必要である.
- 特定非営利活動法人 日本血管外科学会の論文
特定非営利活動法人 日本血管外科学会 | 論文
- II型急性大動脈解離に対する上行置換術周術期に発症したIII型解離の1例
- 人工膝関節置換術後リハビリ中に発症した膝窩動脈仮性動脈瘤破裂の1例
- 成人で発見された重複大動脈弓の手術経験
- 腹部大動脈人工血管置換術後非感染性吻合部仮性動脈瘤破裂の1例
- 胸部,腹部重複大動脈瘤に対するTEVAR+EVAR一期的手術の治療成績