大腿‐膝窩動脈バイパス術後に発症した末梢側吻合部近傍のベーカー嚢腫の1例
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概要
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症例は70代,男性.両下肢閉塞性動脈硬化症に対して,両側大腿—膝窩動脈バイパス術(膝上)を施行した.経過は良好であったが,外来経過観察中(術後約 2 カ月)に左膝窩部の違和感を訴えたため,CT検査を施行したところ,末梢側吻合部近傍に嚢腫状の液体貯留を認めた.同部位に対し,直接穿刺を施行し,粘稠度の高い淡黄色の液体が吸引されたため,ベーカー嚢腫と診断した.一般にベーカー嚢腫は,変形性膝関節症,関節リウマチ,半月板断裂などの膝関節病変が基礎疾患として存在するといわれており,これまでに大腿—膝窩動脈バイパス術後のベーカー嚢腫の発症についての報告例はない.自験例では膝関節疾患の既往がなかったが,発症機序として末梢側吻合部の露出の際に膝窩動脈に近接する関節包を損傷し,ベーカー嚢腫が形成された可能性が考えられた.本術式で膝関節付近まで手術操作が及ぶ場合には,より愛護的に行う必要があることが示唆された.
- 特定非営利活動法人 日本血管外科学会の論文
特定非営利活動法人 日本血管外科学会 | 論文
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