高齢者弓部大動脈置換術の工夫‐若年者との比較および遠隔期予後からみた検討‐
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概要
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【背景】高齢者の弓部大動脈置換術を若年者手術例と比較し,その特徴と遠隔期予後に関する危険因子を明らかにする.【方法】1992年から2006年の間に当科で施行した弓部大動脈置換術89例を対象とし,高齢者群(O群:70歳以上45例)と70歳未満44例(Y群)に分類し,患者背景,術中因子,手術成績,生存率の比較を行った.【結果】平均年齢はO群74 ± 3 歳,Y群61 ± 9 歳,置換部位は全弓部79例,近位弓部 7 例,遠位弓部 3 例で置換部位に両群間に差はなかった.O群には真性瘤が多く(p = 0.02),再手術例(p = 0.03)が少なかった.手術時間,脳分離時間(O群90 ± 23分,Y群107 ±34分,p = 0.008)はO群が有意に短く,挿管時間は長かった(O群7.3 ± 6.1日,Y群4.1 ± 3 日,p = 0.003).在院死(O群4.5%,Y群8.9%),脳合併症発生率(O群6.8%,Y群6.7%)および生存率に有意差を認めなかった.O群では術後脳合併症(p = 0.008),大動脈遮断時間(p = 0.025),脳分離時間(p = 0.042),再手術(p = 0.024)が在院死亡の危険因子であり,人工心肺時間(p = 0.03)と術前ショック状態(p = 0.03)が遠隔期生存率を有意に低下させた.【結論】 の弓部置換術は若年者に比べても,手術成績および遠隔成績には差を認めず良好な成績が得られた.高齢者ではとくに破裂前の手術が重要で,人工心肺時間と大動脈遮断時間および脳分離体外循環時間を短縮し,さらに脳合併症の発生を抑えることが高齢者の手術成績の向上に重要と考えられた.
- 特定非営利活動法人 日本血管外科学会の論文
特定非営利活動法人 日本血管外科学会 | 論文
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