術後15年目にモノフィラメント血管縫合糸の劣化を認めた吻合部仮性動脈瘤破裂の1例
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概要
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大動脈人工血管置換術後の遠隔期に起こりうる合併症に吻合部仮性動脈瘤がある.不適切な縫合糸の使用が主因と考えられる症例を経験した.症例は75歳の男性.1990年に腹部大動脈瘤に対し人工血管置換術を行った.15年後の2005年に腹部大動脈瘤破裂を発症し,緊急手術を行った.前回ラッピングした瘤壁内の近位側,遠位側吻合部とも血管縫合糸は断裂し吻合部仮性動脈瘤を形成していた.術中採取した縫合糸の分析の結果,モノフィラメントナイロン糸(松田医科工業社製エムレーン)が使用されていた.現在の縫合糸は強度,柔軟性を考慮し,生体内で安定であるモノフィラメントポリプロピレン糸が多く使われているが,一世代前にはナイロン糸が多く使用されていた.ナイロンは生体内で加水分解され劣化する可能性がある.分析の結果,生体内で加水分解され劣化した状態に血行力学的ストレスが引き金となり縫合糸は破断し仮性動脈瘤の形成につながったと考えられた.
- 特定非営利活動法人 日本血管外科学会の論文
特定非営利活動法人 日本血管外科学会 | 論文
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