都市部男性勤務者の32年間の身体所見の推移 ‐1977-2008年の定期健康診断成績の検討‐:―1977-2008年の定期健康診断成績の検討―
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概要
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抄録:都市部男性勤務者の32年間の身体所見の推移―1977-2008年の定期健康診断成績の検討―:北村明彦ほか.大阪府立健康科学センター―目的:近年,経済不況のもとでの厳しい労働環境に晒される勤労者の健康状態の悪化が懸念されている.本研究では,勤務者における循環器疾患のリスクファクターの動向をとらえるため,都市部の企業勤務者の最近32年間の定期健康診断成績を検討した. 対象と方法:大阪府下の4企業(商社1,金融2,道路公団1)を対象企業とした.1977-2008年の単年度ごとに40歳代,50歳代の男性の健診成績を検討した.経年変化を検討した所見は,最大血圧値(SBP),最小血圧値(DBP),Body mass index(BMI),血清総コレステロール値(TCH)の各平均値,及び高血圧,肥満,高コレステロール血症,喫煙,飲酒,メタボリックシンドローム関連のリスク集積の各頻度である. 結果:受診者数(40-59歳計)は,1977年の822人から1992年の2,651人まで年々増加した後,その後減少に転じ2008年は1,455人となった.高血圧の頻度は,1977年の40歳代25%,50歳代39%から40歳代は1989年の14%まで,50歳代は1992年の23%までそれぞれ年々減少した.しかし1990年代以降,SBP,DBPレベル,および降圧剤服用率の上昇に伴い,高血圧の頻度は増加に転じ,2008年には40歳代29%,50歳代47%となった.BMIの平均値ならびに肥満者の頻度は1980年代半ばから2008年まで増加の一途を辿っていた.すなわち,1990年代以降の血圧レベルの上昇の背景として,肥満者の増加が関連していると考えられた.しかしながら,非肥満者中の高血圧者の割合もまた,1990年代初期から増加していることが明らかとなり,肥満以外の他の要因の関与が示唆された.高コレステロール血症,耐糖能異常,肥満を伴うリスク集積者のいずれの頻度も近年にかけて増加していた.TCH平均値は,1977年では40歳代で195 mg/dl,50歳代で196 mg/dlであったが,2008年には40歳代で204 mg/dl,50歳代で207 mg/dlまで上昇した.肥満を伴うリスク集積者の頻度は,2008年には40歳代で13%,50歳代で15%であった.また,50歳代では,肥満していないリスク集積者の頻度が肥満を伴うリスク集積者の頻度よりも一貫して高率であった. 結論:今回の対象企業は限られたものではあるが,本研究成績により,1990年代以降の厳しい労働環境のもとで勤務者の循環器疾患発症のリスクが増加していることが示された.公衆衛生の見地より,個人的アプローチのみならず労働環境の改善を含めた包括的な予防対策の展開が望まれる. (産衛誌2010; 52: 123-132)
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