『ケモカインと幹細胞』 CXCL12-CXCR4 軸を介した幹細胞誘引の調節因子
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概要
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CXCL12-CXCR4 シグナル伝達経路は,始原生殖細胞・神経前駆細胞・造血幹細胞の生体内移動,および20 種類以上のがんの悪性増殖・転移に主要な役割を果たしていることが知られている.これまで,CXCL12 はCXCR4 受容体の唯一のケモカインリガンドと考えられてきた.我々は,類縁のケモカインCXCL14 がCXCR4 に高親和性で結合し,CXCL12 によるケモタキシス活性を抑制することを見出した.ヒト単球性白血病細胞株THP-1 にCXCR4 を過剰発現させたところ,<span style="font-variant: small-caps;">125</span>I 標識CXCL14 の高親和性結合部位が増加し,逆にsiRNA を用いてCXCR4 をノックダウンさせると,その数が減少した.また,THP-1 細胞,ヒトT細胞性白血病由来Jurkat 細胞,およびヒト骨髄由来CD34<span style="font-variant: small-caps;">+</span>造血前駆細胞において,CXCL14 はCXCL12 による細胞誘引をほぼ完全に阻害した.詳細な解析によって,CXCL14 はCXCL12 とは異なるCXCR4 上の部位に結合し,CXCR4 受容体を細胞内へ取り込ませることで細胞をCXCL12 不応答化させていることが判明した.以上の実験結果は,CXCL14 がCXCL12 の天然阻害因子として作用する可能性を示唆している.CXCL14 はCXCL12 と並んで,魚からヒトまでアミノ酸配列が高度に保存されているケモカインである.CXCL14 は,発生や形態形成に重要な役割を果たすCXCL12-CXCR4 軸の強さを微調整する分子として,non-signaling 受容体CXCR7 と共にゲノム内に保存されてきたものと推察される.興味深いことに,CXCL12-CXCR4 軸の抑制は,CXCL14 のC末端二量体ペプチドによっても再現された.したがって,CXCL14 を構造可変することにより,新しいタイプのCXCR4 アンタゴニストを開発できる可能性がある.
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