頸椎手術後に悪化した嚥下障害例に対する手術治療経験
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概要
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頸椎骨棘に伴う嚥下障害に対して手術を施行されたにもかかわらず術後長期間しかも高度な嚥下障害が生じた症例を経験した。症例は75歳,男性。2000年頃から嚥下困難を自覚し, 2004年9月整形外科にて変形性脊椎症による嚥下障害の診断にてC5-C7の骨棘切除を施行された。その後嚥下障害はむしろ進行した。2005年8月精査目的のため当科紹介。声帯運動は良好,下咽頭梨状陥凹に唾液貯留を認めた。嚥下透視検査では喉頭挙上制限,喉頭閉鎖の中等度障害,頸部食道口開大は高度障害を認めた。2006年11月頃より経口摂取がほとんど不可能となり,胃瘻留置された。2007年8月22日輪状咽頭筋切断術および喉頭挙上術を施行し,術中下咽頭・頸部食道周囲に高度の癒着瘢痕病変を認めた。術後嚥下困難は著明に改善し経口摂取可能となった。本例のように嚥下障害改善目的で行う前方手術が嚥下状態を悪化させることがあることを認識すべきである。
- 耳鼻と臨床会の論文