耳下腺に発生したoncocytic carcinomaの1例
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概要
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oncocytic carcinoma (膨大細胞癌) はまれな唾液腺腫瘍である。今回,耳下腺原発のoncocytic carcinomaの1症例を経験したので報告する。症例は左耳下部違和感が主訴の74歳の女性である。左耳下部に触診で約2cm程度の可動性のある腫瘤を触知した。MRI 検査で左耳下腺後下部に直径1.5cmの占拠性病変を認めた。腫瘍の信号強度はT1強調像でlow,T2強調像でhighを示し,Gdで軽度enhanceされた。頸部超音波検査にて左下内深頸部領域に約1cmのリンパ節腫大を認めた。耳下腺浅葉切除により腫瘤を摘出した。病理診断はoncocytic carcinomaで,腺内リンパ節に転移が認められた。このため,保存的頸部郭清と放射線治療を追加した。治療半年後に顔面神経麻痺を発症,徐々に進行し,完全麻痺となった。画像上,再発が疑われたため,耳下腺の再発腫瘍とともに,顔面神経本幹を側頭骨内垂直部と分岐部手前の範囲で切断,摘出した。顔面神経の切除部位に腓腹神経を移植し,再建した。しかし,病理検査では残存耳下腺のみに再発腫瘍がみられ,顔面神経に腫瘍細胞の浸潤はなかった。このことから顔面神経麻痺は特発性または集学的治療に伴う二次性の変性と考えられた。
- 耳鼻と臨床会の論文