当院における難治性中耳炎症例の検討:-鼓膜チューブ留置術の有効性について-
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概要
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今回われわれは、難治性中耳炎症例の起炎菌および治療法について検討し、さらに、保存的治療抵抗性症例に対する鼓膜チューブ留置術の有効性について検討したので報告する。対象は、2002年1月から2004年9月にかけて当院を受診した中耳炎症例中、難治性中耳炎と判断され、細菌検査を施行した70例 (4カ月-9歳、平均2歳7カ月) である。難治性中耳炎は、経口抗菌薬の治療で2週間以上改善がみられない例や、抗菌薬投与を中止するとすぐに再発を繰り返す反復例とした。さらに、内服通院治療および複数回にわたる鼓膜切開にても急性中耳炎を反復し、改善の認められなかった症例や、1カ月以上耳漏が持続する症例に対し、鼓膜チューブ留置術を施行し、その改善度について検討を行った。起因菌としてインフルエンザ菌が最も多く、26例 (37.1%) に認められ、そのうちBLNARが3例、low-BLNARが12例、BLPARが1例認められた。次に肺炎球菌が多く25例 (35.7%) に認められ、そのうち10例がPRSPで、13例がPISPであった。次にブドウ球菌が多く11例 (15.7%) で、そのうち10例がMRSAであった。70例中17例 (24。3%) は複数起炎菌の混合感染であった。難治性中耳炎と診断された70例は、感受性のある抗生剤内服治療、鼻処置、鼓膜切開、耳処置にて治療を行った。多剤耐性菌が起因菌の場合、抗生剤投与を中止し、頻回な通院、鼻処置、複数回にわたる鼓膜切開、耳処置にて加療を行った。これらの治療により70例中64例 (91%) は改善した。残りの6例 (9%) は、チューブ留置術を施行し、全員中耳炎の改善が認められた。今回の検討では、感受性のある薬剤を選択することにより難治性中耳炎の91%がコントロール可能であった。また、保存的治療に抵抗する難治性中耳炎症例に対し鼓膜チュ-ブ留置術は大変有効であった。
- 耳鼻と臨床会の論文