精神疾患を有し、巨大な脳膿瘍を併発した真珠腫性中耳炎の1例
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
22歳男性の真珠腫性中耳炎に由来する側頭葉膿瘍を経験したので報告する。2002年6月左耳漏を主訴に松尾耳鼻咽喉科医院を受診し、頭痛と発熱が出現したため、済生会福岡総合病院を紹介受診した。真珠腫性中耳炎に伴う化膿性髄膜炎の診断で抗生剤の点滴を行ったが改善せず、逆に失見当識障害や右不全片麻痺、意識レベル低下が出現し、造影CTにて側頭葉膿瘍、硬膜外膿瘍を認めた。その後、二度の穿頭ドレナージと耳手術、さらに抗生剤によって治癒した。現在では医療技術の進歩に伴い、診断・治療が進んだために、合併症が出る前に真珠腫を治療することが多い。この症例は軽度の精神発達遅滞と適応障害という精神疾患を有していたが、周囲が個性と理解していた。このため、これまで精神科を受診したことがなく、精神疾患のコントロールが付いていなかった。適応障害により、本人は引きこもりがちで、両親も本人に強くかかわらなかったために症状に気付く時期が遅くなり、耳性頭蓋内合併症を生じる一因になったと推測される。
- 耳鼻と臨床会の論文