放射線照射による遅発性甲状軟骨壊死の1例
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概要
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甲状軟骨壊死は頭頸部癌に対する放射線治療の合併症の一つで、まれではあるが保存的治療に抵抗し最終的には喉頭全摘術を余儀なくされることもある。今回われわれは、上咽頭癌頸部リンパ節転移の治療として放射線治療を受けた後、長期を経過し、甲状軟骨壊死を発症した症例を経験したので報告する。症例は65歳男性。8年前に他医にて上咽頭癌頸部リンパ節転移の診断を受け、化学療法および放射線根治照射を施行された。その後、残存頸部リンパ節に対して両側頸部郭清術を施行された。治療後の経過は良好で再発・転移を認めなかったが、急性上気道炎を契機として甲状軟骨壊死に伴う咽頭皮膚痩を生じた。頻回の生検にて癌の再発は否定された。軟骨の壊死は部分的であり、喉頭の温存が可能であった。甲状軟骨部分切除術、咽頭皮膚瘻切除術、DP皮弁による再建術を施行し、発声機能、嚥下機能とも満足できる結果が得られた。
- 耳鼻と臨床会の論文