甲状軟骨形成術I型施行後に起声時の発声困難を訴えた1例
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概要
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症例は、40歳男性で、左迷走神経鞘腫摘出時に菲薄化した迷走神経を温存したが、腫瘍摘出術6年後も左声帯麻痺を認め気息性嗄声を呈した。麻痺声帯は高度に萎縮して安静時に正中-傍正中位に固定し、起声時に僅かな声帯の外転を認めたが、発声時には声門後部はほぼ閉鎖していると思われた。左甲状軟骨形成術I型施行後、嗄声は改善したが起声時の発声困難を訴えた。麻痺声帯は十分膨隆し、発声時に声門はほぼ閉鎖して両側対称性に粘膜波動が惹起された。しかし、起声時に術前よりも明らかな奇異性運動を認め、これが起声時の発声困難の原因と考えられた。甲状軟骨形成術I型の適応症例で、僅かでも奇異性運動を認めた場合は、後筋枝あるいは後筋の切断を併用する必要があると考えられた。
- 耳鼻と臨床会の論文