腎細胞癌の甲状腺への単独転移の1例
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概要
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今回われわれは, 比較的稀とされる腎細胞癌の甲状腺への単独転移を経験した. 症例は56歳女性で前頸部の腫脹を主訴に来院した. 超音波検査, CTスキャン所見では両葉に腫瘤像を認めた. <SUP>201</SUP>T1シンチでは集積が認められたものの, 吸引細胞診では良性病変が疑われた. 甲状腺右葉, 峡部切除術を行い, 術中迅速病理検査を行つたところ明細胞癌で腎よりの転移が疑われた. 実際に6年前に腎癌手術の既往があつた. 全身検索を行つたが, 他部位への転移は認められなかつたので残存甲状腺摘出術を行つた. 同様の報告は渉猟しえた範囲では本邦でこれまで9例の報告を見るのみであつた. 転移出現までの期間はほとんどが5年以上と長く, 転移性甲状腺癌にしめる腎癌の占める割合はもつと高いとする報告もあり, 特に腎癌の既往のある場合, 甲状腺腫の診断に際してはこのことを念頭に置く必要があると思われた.
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