嚥下障害に対する経管栄養中に生じた銅欠乏症の1例
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概要
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嚥下障害に対する長期経管栄養により銅欠乏症を生じた症例を経験したので報告する。症例は43歳、男性。左椎骨動脈の解離性動脈瘤破裂後生じた嚥下障害に対して、リハビリ専門病院にて嚥下訓練を受けたが改善が得られず、胃瘻による長期経管栄養を8カ月間行っていた。嚥下改善手術目的で当科を受診しその術前検査で貧血と白血球減少を認めた。精査の結果、血清銅とセルロプラスミン値が低値を示した。さらに、使用されていた経管栄養剤の銅含有率も極めて少ないことが判明した。治療として経静脈的にミネラリン®1A/Bを1カ月間投与し貧血、白血球数の改善が得られたことから、経管栄養に伴う銅摂取不足による銅欠乏症と診断した。その後の外科的治療により誤嚥なく少量の経口摂取が可能となった。長期にわたり経管栄養のみに依存している症例では、使用している経管栄養剤の微量元素の組成に注意し定期的な血液検査が必要と考えられた。
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