女性高齢者の尿失禁と関連する体重などの要因の断面研究
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
目的 尿失禁(Urinary Incontinence)は,排尿障害の中でも QOL (Quality of life)に大きく関る疾患といわれている。超高齢社会のわが国において,長い老年期の生活の質(QOL)を保ちつつ生きていくことは,重要な課題のひとつである。そこで本研究は前期高齢者の女性の尿失禁有病率とそのリスク要因を明らかにすることを目的として行った。<br/>方法 2010年10月,札幌市に居住する65歳以上74歳以下の1,600人の女性を住民基本台帳から無作為抽出し,自記式調査票を郵送した。調査票は,基本的属性,健康状態,現病歴,既往歴,ICIQ–SF (International Consultation on Incontinence Questionnaire-Short Form)など24項目群の質問から構成し,郵送法による断面調査を行った。本研究における尿失禁ありの定義は,ICIQ–SF の尿失禁の頻度で,週 1 回以上と回答したものとした。統計解析にはロジスティック回帰分析を用いた。<br/>結果 802人から同意を得た(回答率50.1%)。対象者の平均年齢±標準偏差は69.8±2.6(歳),自己申告による尿失禁有病率は29.7%であった。ICIQ–SF の平均値(±標準偏差)は全対象者で1.7±2.9,尿失禁あり群で5.6±2.5,尿失禁なし群で0.1±0.5であった。多重ロジスティック回帰分析の結果,尿失禁ありのオッズ比(95%信頼区間)は,過去の最大体重60 kg 以上で1.94(1.32, 2.85),喫煙指数300以上で1.98(1.18, 3.32),健康状態がよくないほうで2.54(1.47, 4.39),膀胱疾患の既往で2.05(1.36, 3.10),痔疾患の既往で1.62(1.09, 2.40),母の尿失禁の既往で1.72(1.11, 2.69)であった。<br/>結論 本研究の対象者である前期高齢者の女性802人(65歳以上75歳未満)の自己申告による尿失禁有病率は29.7%であった。今後は追跡調査研究を実施し,尿失禁のリスク要因をさらに解明していく予定である。
- 日本公衆衛生学会の論文
日本公衆衛生学会 | 論文
- 心理的健康の維持・増進のための望ましい生活習慣についての疫学研究
- 脳卒中予防対策地域における脳卒中発生状況と重症度の推移に関する疫学的研究
- 健康づくりのための運動指針2006の認知状況と他の健康づくり施策の認知および人口統計学的変数との関連
- 在宅生活をしている統合失調症患者のWHOQOL-26尺度に影響を与える要因の検討
- 肥満児の体力と保健指導プログラムにおける運動療法の効果