民生委員を通じた閉じこもり高齢者把握の可能性
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概要
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目的 閉じこもり高齢者の把握ルートの一つに民生委員によるものがある。しかし,民生委員を通じた把握がどの程度可能か,それに伴う問題点は何かを分析した研究はほとんどない。本研究では,第 1 に,民生委員が意識的に把握および報告活動を行うことで,閉じこもり高齢者の把握がどの程度可能か推定すること,第 2 に,民生委員による把握および報告に伴う困難を質的分析により明らかにすること,の 2 点である。<br/>方法 調査対象は,民生委員協議会から閉じこもり高齢者の把握および報告に協力が得られた関東地方の一市の地区であった。民生委員を通じた把握率の推定は次の 3 段階で行った。第 1 に,対象地区の高齢者の確率標本を対象とした量的調査により閉じこもり高齢者数を推定する。第 2 に,当該地区の民生委員に閉じこもり高齢者の把握および報告活動を 2 か月間意識的に実施してもらう。第 3 に,民生委員によって閉じこもり高齢者として報告されたケースが閉じこもりであるか否かを評価し,「民生委員を通じた把握数」を確定させる。第 4 に,量的調査で把握した「閉じこもり高齢者の推定数」に対する「民生委員を通じた把握数」の比率で把握率を求める。把握および報告活動に伴う問題点の解明は,把握および報告活動に参加した民生委員を対象としたフォーカスグループインタビューに基づき KJ 法を用いて行った。<br/>結果 民生委員を通じた把握率は1.4%であった。民生委員が把握および報告をする際に直面する困難には,「把握の機会が乏しい」と「報告をためらう」があった。<br/>結論 民生委員を通じた閉じこもり高齢者の把握率は低いものの,協力を得ることで現在よりも多くのケースが把握可能となることが示唆された。民生委員を通じた把握率を高めていくには,民生委員の日常の活動負担の軽減,ケースとして報告しても住民との関係性が害されないように匿名性が確保される必要があることが示唆された。
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