地域の保健・福祉の向上を目指した住民ボランティア育成への取り組み 埼玉県鳩山町におけるこれまでの歩みと今後の課題
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概要
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目的 地域の保健•福祉の向上を目指す取り組みとして,住民ボランティア育成を行った。その経緯と内容について紹介するとともに,今後の課題と活動の方向性を検討した。<br/>方法 ①平成13年,地域住民への調査を行い,地域課題を抽出した。②平成14年,課題解決の手段として,保健センターや筆者らとともに地域の健康づくりに取り組む住民ボランティア「地域健康づくり支援者」(以下,支援者)を育成した。③同年,①で把握された虚弱高齢者を対象に,行政と支援者の協働による介護予防教室を開催した。④支援者のステップアップを目的に,継続的な研修を実施した。⑤平成18年,支援者が運営主体となり,高齢者の体力づくりと交流を目的とした「地域健康教室」を立ち上げた。⑥支援者に対し,活動の課題や同町が抱える課題に対する考え,などのアンケートを実施した。⑦支援者の育成•支援と並行し,一般住民に対するポピュレーションアプローチ(意識啓発などの集団全体に対する働きかけ)も行った。<br/>結果 ①の調査から把握された地域課題「既存組織の活性化」,「住民ネットワークの強化」,「地域共生意識の向上」への取り組みとして育成•支援してきた住民ボランティア(支援者)は,現在約40人である。支援者らは,行政との協働である介護予防教室や自主活動である地域健康教室において積極的に活動している。介護予防教室は平成22年度には第13期が修了し,地域健康教室は町内 4 か所にまで増えた。介護予防教室修了後には地域健康教室で健康づくりを継続できる仕組みもできた。さらに,今後の支援者の育成や既存の他組織との連携も視野に入れ,会則の作成,会の組織化を行い,「鳩山町健康づくりサポーターの会」として新たなスタートを切った(平成23年 4 月)。広く一般住民に対するポピュレーションアプローチとしては,健康づくりへの意識啓発を目的としたアンケート調査や町が実施する住民健診の充実,健康に関する講演会,シンポジウムの開催などを展開した。<br/>結論 地域の保健•福祉の向上には,核となる住民ボランティアの育成と行政や専門職による継続的なサポート,さらに並行してポピュレーションアプローチにより住民全体の意識の向上を行うことが重要である。今後さらに,住民同士のネットワーク化を推進するとともに,住民の社会参加の場の活性化と地域の保健•福祉の向上の関連を検証する必要がある。
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