所得状況による特定健康診査の受診行動と関連する因子の検討 所得の指標として市民税課税層と非課税層の相違に着目して
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概要
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目的 札幌市の国民健康保険(以下「国保」)が行った市民アンケート調査で得られたデータを用いて,特定健康診査(以下「特定健診」)の受診行動と関連する要因について,市民税非課税層•課税層別に交絡要因を考慮して分析することにより,低所得化が顕著になっている国保における特定健診事業の運営改善のための資料とすることを目的とした。<br/>方法 札幌市国保で実施された無記名自記式アンケート調査の回答を数値として入力したデータベースの二次分析を行った。アンケートは平成21年(2009年)7 月 2 日から 8 月 3 日に行われ,平成20年度に40歳以上となった札幌市国保被保険者で,市民税非課税•課税および特定健診受診の有無により 4 群に分け,各群ごとに無作為抽出した計3,000人のうち調査に同意した人から回答を得た。調査項目は,年齢,性別等の基本属性,非受診の理由(受診なし群のみ),健診•生活習慣病等に関する認識から構成されていた。今回の分析には,受診なし群で他の健診を受けたと回答した人を除き有効回答が得られた1,656人のデータについて,課税状況別に特定健診受診との関連を多重ロジスティック回帰分析により分析した。<br/>結果 受診に関連する要因のうち周知内容に関する認知度については,非課税層,課税層とも,「受診場所」認知の性•年齢調整オッズ比(95%信頼区間)が,検討した 4 項目のうちで最も高かった(非課税層8.31(4.83–14.28),課税層6.51(4.23–10.03))。健診等に関する認識では,非課税層,課税層に共通して「健診受診歴」,「次の健診受診意向」,「家族等の受診経験」が受診に有意な関連を示してモデルに残り,非課税層では「適当な自己負担額は無料と認識」,課税層では「健診は時間に余裕のある人が受けるものと思わない」が有意だった。受診歴と受診意向の 2 項目を除いたモデルでは,非課税層で「検査への関心」,「現在喫煙なし」,「健診は無症状の人にも必要」,課税層では「健康情報への関心」が新たに抽出された。<br/>結論 受診場所の認知が受診ととくに強く関連していたため周知方法に配慮する必要がある。非課税層,課税層とも健診受診の習慣化が重要であり,非課税層では自己負担軽減策の有効性が示唆されるほか,検査への関心,意義の認識等が受診行動と関連し,課税層では健康情報と関連付けた意義や効果の理解が重要と考えられた。
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