授乳期の栄養方法の現状と母親の育児への思いに関する分析 乳児健康診査のデータベースの分析から
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概要
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目的 本研究では,出生人口に基づいた乳児健康診査のデータベースの分析から,授乳期の栄養方法とその関連要因を分析し,かつ栄養方法の違いによる母親の育児への思いを明らかにすることで,今後の地域母子保健における効果的な支援のあり方を検討する基礎的資料とすることを目的とした。<br/>方法 本研究で用いたデータベースは,大阪市福島区において2005年 4 月から2009年12月までに 3 か月児健康診査を受診した児の健診データのうち,個人情報をすべて除外したデータファイルである。分析に用いたデータは,乳児に関する要因として,受診時の栄養方法(母乳栄養,混合栄養,人工栄養),在胎週数,胎児数,出生体重,保育器の使用状況,出生年等を用いた。さらに,母親に関する要因として,計画妊娠の有無,妊娠中の喫煙状況と飲酒状況,婚姻状況,妊娠高血圧症候群の有無,出産時の母親の年齢,就労状況,経済不安の有無,育児協力者の有無,育児相談者の有無,母親の子どもとの生活への思い,ならびに子育て中の母親の気分を使用した。<br/>結果 2005年 4 月から2009年12月までに,2,552人の乳児が 3 か月児健康診査を受診した。このうち,受診時の栄養方法について不明な者61人,および出生後 6 か月以降に受診した者15人を除く,2,476人のデータを分析対象とした。3 か月児健康診査を受診した児の栄養方法を分析すると,全体の56.8%が母乳栄養による授乳,28.7%が混合栄養による授乳,14.5%が人工栄養による授乳であった。授乳期の栄養方法は,出生年と有意な関連が認められ,出生年が近年になるほど,人工栄養の割合が低くなっていた。また,これらの栄養方法は,双胎出生,出生体重,母親の妊娠中の喫煙状況,ならびに母親の出産時の年齢と有意な関連が認められた。さらに,混合栄養または人工栄養による授乳を行っている母親では育児が楽しいと回答した者が88.4%であったのに対し,母乳栄養による授乳を行っている母親では93.4%と,母乳栄養による授乳を行っている母親に育児が楽しいと回答する者が有意に多かった。<br/>結論 本調査結果から,出生後 3 か月から 5 か月における乳児の授乳はおよそ57%が母乳栄養による授乳,15%が人工栄養による授乳であり,さらに人工栄養による授乳は年々減少していることが明らかとなった。母乳栄養による授乳を行っている母親は,育児が楽しいと回答する者が有意に多いことが判明した。一方,これらの栄養方法は,双胎出生,出生体重,母親の妊娠中の喫煙状況,ならびに母親の年齢との関連が認められ,授乳指導を効果的に行うためにはこれらの要因を考慮した上で指導する必要があることが示された。
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