農村・山間地域に居住する前期高齢者の膝関節痛に対する保健行動 膝関節痛の有無と性差に焦点を当てて
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概要
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目的 農村•山間地域の在宅前期高齢者の膝関節痛有症率を把握し,膝関節痛予防•改善のための保健行動を性別に明らかにすること,保健行動に関連する要因を把握することを目的とした。<br/>方法 福島県南会津町に居住する65~74歳の地域在住高齢者2,758人を対象に,2008年11月に無記名自記式質問紙調査を実施した。調査項目は,基本属性,ライフスタイル関連項目(喫煙,飲酒,農作業,除雪,友達との"お茶のみ"),通院状況,膝関節痛の有無や罹患期間,日本版変形性膝関節症患者機能評価表(JKOM),保健行動に関する項目であった。<br/>結果 有効回答は1,415票であった(有効回答率51.3%)。膝関節痛有症者は496人(35.1%)で,女性は男性の約 2 倍の有症率であった。膝関節痛のある者の特徴として,Body Mass Index が高いこと,運動機能低下のリスクがあること,外出頻度が少ないこと,通院していることが挙げられた。膝関節痛予防•改善のために何らかの保健行動をとっている人は657人(46.3%)であり,膝関節痛あり群で有意に多かった。保健行動をともにとる人や保健行動の情報源としては,「お茶のみ友達」が女性で多く,「家族」は男性で多かった。行動の内容をみると,「歩く」は男性で,「体操」や「食事に気をつける」は女性で多かった。膝関節痛ありの女性では,非喫煙者•農作業実施者•"お茶のみ"ありで保健行動の実施率が高かった。膝関節痛なしの男性では,非喫煙者•JKOM 下位尺度の「痛みとこわばり」,「健康状態」が悪い者で保健行動の実施率が高かった。膝関節痛なしの女性では,独居や夫婦二人暮らし,外出頻度が週 1 回以上の者で保健行動の実施率が高かった。<br/>結論 本研究における膝関節痛の有症率は山間部高齢者における先行研究に近い値であった。性別•膝関節痛の有無別に,保健行動の内容,共同実施者,情報源,行動実施に関連する要因が異なっていたことから,対象に応じてアプローチ方法を工夫する必要があること,非専門職からの情報入手が多いことから,保健行動の留意点等を丁寧に伝える必要があることが示された。
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