温泉溺水による心肺停止蘇生後低酸素脳症に対し脳低温療法を行った一例
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概要
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<B>症例 : </B>70歳代男性。主訴 : 意識障害。現病歴 : 平成○○年某日旅行で訪れた山形県内の温泉で入浴中、意識消失し溺水。目撃者なし。浴槽で浮いていた状態で他の宿泊客が発見。呼吸なく胸骨圧迫施行。その後自発呼吸が再開。救急隊現着時JCS300、GCS E1V1M1。当センターへ搬送となる。当院着時JCS200。胸部Xp、CTで両肺に肺炎と思われる浸潤影あり。頭部CTで意識消失の原因疾患、低酸素性変化は認めず。来院後も意識障害が持続した為、蘇生後低酸素脳症と判断。直ちに脳低温療法を導入した。ミダゾラムで鎮静、フェンタニルで鎮痛を行い、シバリング予防の為、ベクロニウムを使用した。ERで冷水による胃洗浄、冷却輸液を施行。ICU入室後Arctic Sun<SUP>®</SUP>を装着。来院後約4時間で目標体温である34°Cに到達した。24時間34°Cを維持し、その後48時間かけ36度まで復温した。温泉水誤嚥による肺障害に対しては、抗生剤(PIPC/TAZとAZM)使用に加え、人工呼吸器による陽圧換気を行い重症化は避けられた。復温後鎮静中止。その後意識は病前まで回復。最終的に社会復帰された。<BR><B>考察 : </B>温泉溺水患者は長時間湯に浸かった事で体温上昇している事が多く、様々な冷却方法を駆使し速やかに目標体温まで下げなければならない。また低体温状態では免疫能が低下し温泉水誤嚥による肺炎は必発と思われ、抗生剤を含めた十分な対応が必要である。<BR><B>結語 : </B>温泉溺水による蘇生後低酸素脳症に対し脳低温療法が有効であった。