日本総合健診医学会 第40回大会・シンポジウム6 タバコフリーの社会を目指して健診現場が日本を救う:-科学的根拠に基づくタバコ対策を健診のメインに-
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概要
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本来タバコ対策は、国を挙げてWHOの定め本邦も批准している国際条約「タバコ規制枠組み条約(FCTC)」にしたがってなされるべきである。しかし、いまなお「たばこ事業法」に基づき国家がタバコ消費拡大を図り続けている本邦では、医師をはじめとする医療従事者においてすら、喫煙のもたらす本質的な問題が周知されているとは言い難い。そのため、予防医学を謳う当学会においてでさえ十分な対策がされていないのが現状である。無論、医療従事者ですら得られない情報が喫煙者に周知されているわけもない。そこで我々には、まずは正しい情報に基づいたタバコ対策、およびそれに基づく啓発が求められる。 ところがほとんどすべての喫煙者はニコチン依存症に陥っており、本邦特有の社会的背景とあいまって強い認知の歪みを有する。そのため、治療開始そのものに対してさえも強い抵抗が示され、容易に解決できるわけでもない。半面、心理療法が効果的で、個別の事例においては認知行動療法や動機づけ面接法が有効であることが示されている。 また、集団に対しては社会心理学的なアプローチが有効であると思われる。そこでR-STP-4Pと呼ばれるマーケティング・プロセスの活用を提案する。R-STPを端的に表現すれば「だれに」商品を勧めるのかを検討するプロセスであるが、FCTCにしたがい「全人類をタバコの害から守る」ことを念頭に置けば、喫煙者のみならず非喫煙者も含め、対象にならない者は存在しえない。4PはそれぞれProduct(製品)、Price(価格・負担)、Place(場所=アクセス)、Promotion(啓発)の頭文字で、これら4つの要素を確認しながら普及に努めるプロセスをあらわす。 ヒトは知識だけで行動を変化させることはまれである。しかし、その知識が驚きにつながれば、心が動き、行動が変化する。これらのアプローチ法の応用範囲は喫煙に限らず、ほとんどの生活習慣病における生活習慣改善に対しても応用可能である。