次世代リチウムイオン電池に向けたナノ空間制御によるSi系負極の構造設計
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概要
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シリコン(Si)はリチウムイオン電池(LIB)の負極材料として現在一般的である黒鉛の約10倍の理論容量をもつため,次世代LIBを実現する高容量負極材料として期待されている。しかし,Siにはいくつかの解決すべき課題があり,負極材料としての実用化への障害となっている。まず,Siは導電性が低く,またリチウム(Li)との反応速度が小さいため,有意なレート特性を発揮させるためにはナノサイズ化および炭素(C)などの導電性物質との複合化が必要となる。Si負極のより深刻な問題は,充放電に伴い激しく体積変化を生じるために電極構造が壊れてしまいサイクル特性が低い点である。そこで本論文では,ナノサイズ化したSiの周囲に,構造変化を緩衝する「ナノ空間」をもつSi系負極材料の構造を設計し,負極特性の詳細を検討した。各章において,鋳型法によりSi周囲に形成させたナノ空間,充放電サイクルにより動的に変化するナノ空間,さらに熱力学的に作製したLi–Si合金から電気化学的にLiを放出して形成されるナノ空間とそれぞれ全く性質の異なるナノ空間を取り扱い,充放電特性およびSiの構造変化を分析することで,新しいSi系負極の構造設計指針を提案する。
- 炭素材料学会の論文