6学会合同シンポジウム5 遺伝子改変T細胞輸注療法のトランスレーショナルリサーチ
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概要
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腫瘍特異的T細胞輸注療法は,進行性悪性黒色腫の患者において既存治療法を凌ぐ効果を示す.他の固形癌や造血器腫瘍では特異的T細胞の誘導が困難な場合が多いが,これら疾患の患者にもT細胞療法を可能とする試みとして,腫瘍特異的T細胞受容体(TCR)遺伝子やキメラ受容体(CAR)遺伝子を導入したT細胞療法が開発され,有効性を示す症例が報告されはじめている. T細胞輸注療法は細胞療法であり,場合によっては遺伝子治療であるという方法論の制約ゆえに,医薬品としての開発はがんワクチンや抗体療法の後を追う形となってきた.しかし,近年の臨床試験における顕著な効果は企業等の関心を集めており,今後製薬化,医療化が急速に進むと考えられる.一方,その顕著な臨床効果は副作用の出現可能性と表裏一体であることも明らかになりつつあり,今後はより有効でかつ安全性の高い治療戦略の構築が必須になる. 我々は,難治性食道癌患者を対象に,がん精巣抗原MAGE-A4特異的なTCR遺伝子をレトロウイルスベクターを用いて患者末梢血リンパ球に体外で導入した後に輸注する,TCR改変T細胞輸注療法の第1相臨床試験を実施した.本臨床試験における安全性,輸注細胞の体内動態,臨床効果につき報告する.また,現在開発中の他の遺伝子改変T細胞輸注療法の前臨床研究におけるデータとともに遺伝子改変T細胞療法の将来的可能性を紹介する.