大気圧コロナ放電イオン化質量分析法による負の大気イオン水クラスター生成の研究

概要

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大気エアロゾルや雲，雨粒生成の凝集核として作用する大気イオンを核とした水クラスターの熱力学的研究は，大気化学や大気環境科学の分野で注目されている．主要な正イオン水クラスターであるH3O＋(H2O)nに関する熱力学的知見は多く報告されている一方，負イオン水クラスターに関する知見は極めて少ない．これは，負の大気イオンの生成を制御できるイオン化法が確立されていないことに由来する．最近著者らは，放電実験に最適なニードル電極を見いだすことで，様々な負の大気イオンの生成を制御可能な大気圧コロナ放電システムを確立し，質量分析計と組み合わせることで，種々の負の大気イオン水クラスターのマススペクトルの取得に初めて成功した．本稿では，大気化学の分野で注目されている負の大気イオンY－（HO－, O2－, HO2－, CO3－, NO3－, NO3－(HNO3)2）を核とした水クラスターY－(H2O)nのマススペクトルと，そのパターンから推定される第一水和殻及びマジックナンバー様の特異的安定性を有するクラスターサイズを示す．また，大気圧コロナ放電イオン化質量分析法における各種大気イオンY－とその水クラスターY－(H2O)nの生成機構について述べる．