外尿道口閉塞と尿膜管遺残構造の高度拡張を呈した尿膜管開存の子牛の1例
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
外尿道口が閉塞し尿膜管遺残構造が高度に拡張した尿膜管開存の子牛1頭について診断および治療を行う機会を得たので,その概要を報告する.症例は2カ月齢の黒毛和種 (雌,体重50kg) で,生後1度も外尿道口からの排尿が見られず,本動物病院へは尿膜管遺残構造の摘出手術を目的として来院した.来院時,症例は常時軽度背弯姿勢を示し,臍部より尿の滴下を認めた.腹圧が常に高く触診を嫌うため,腹部深部触診を行うことはできなかった.仰臥位保定で腹部超音波検査を行ったところ,臍の直ぐ尾側方向に,液体を多量に貯留して細い管腔構造で膀胱と連絡する10cm×6cm大の嚢状構造物が描出された.尿膜管遺残構造が高度に拡張した尿膜管開存と診断し,これを外科的に切除することとした.腹部超音波検査所見の通り嚢状構造物は膀胱と連絡しており,液体を多量に貯留して拡張した尿膜管遺残構造であることが確認された.膀胱にも尿が多量に貯留しており,膀胱の圧迫により外尿道口からの排尿の有無を確認したが,外尿道口からの排尿はなく,内側からの薄い膜状構造の突出が認められた.この膜状構造を鉗子で穿孔することで,外尿道口からの排尿が可能となった.その後,臍部を含む尿膜管遺残構造を全切除し,膀胱をレンベルト-カッシング縫合にて閉鎖した.滅菌生理食塩水で腹腔内を洗浄後,閉腹して手術を終了した.手術後,子牛は外尿道口からの自然排尿が可能であった.摘出後の尿膜管遺残構造を切開したところ,壁は肥厚し内部に多量の液体(尿)を貯留していた,この尿の細菌培養検査の結果,Escherichia coliが多数分離された.
著者
-
石川 弘
NOSAI磐井 西磐井家畜診療所
-
高橋 聖大
岩手大学共同獣医学科 大動物診断治療学研究室
-
Kim Danil
岐阜大学大学院連合獣医学研究科
-
佐々木 恒弥
岐阜大学大学院連合獣医学研究科
-
Devkota B.
岩手大学共同獣医学科 大動物診断治療学研究室
-
山岸 則夫
岩手大学共同獣医学科 大動物診断治療学研究室