乳牛の初乳中アデノシンディアミナーゼ活性の臨床的意義の検討
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概要
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乳汁中のアデノシンデアミナーゼ(ADA)活性の臨床的意義を検討した.まず臨床的に健康な搾乳中のホルスタイン種成乳牛35頭の乳汁を初乳と常乳(泌乳初期,泌乳最盛期,泌乳中期,泌乳後期)に区分し,乳清中のADA活性値を測定した.常乳の乳清ADAは0.03±0.01 IU/ℓと著しく低値だったが,初乳は11.9±2.9 IU/ℓ(平均±標準誤差,以下同)と,常乳に比べて高値を示した.次に,ホルスタイン種成乳牛11頭について,分娩前後の血清ADA活性値と末梢血リンパ球幼若化能を調べた.また初乳および分娩1週間後の乳清ADA活性値と初乳中リンパ球幼若化能を測定した.これらの結果は,乳汁CMT変法検査が陰性牛の非乳房炎牛(6頭)と陽性牛の潜在性乳房炎牛(5頭)に分けて検討した.分娩前後の血清ADA活性値は,潜在性乳房炎牛が非乳房炎牛に対して高値を示す傾向が認められ,初乳の乳清ADAでも非乳房炎牛が13.5±1.7 IU/ℓ,潜在性乳房炎牛が23.0±5.1 IU/ℓで,潜在性乳房炎牛が非乳房炎牛に対して有意(p<0.05)な高値を示した.分娩前後の末梢血リンパ球幼若化能は,非乳房炎牛では分娩時に低下する傾向がみられたが,潜在性乳房炎牛ではそのような傾向は認められず,分娩時にも高い反応性を示した.初乳中リンパ球幼若化能は,いずれのマイトージェンで刺激した場合も,潜在性乳房炎牛が非乳房炎牛に対して著しい高値を示した.PHAによる刺激指数がきわめて高値を示した個体では初乳中ADA活性も高値を示した.以上のことから,潜在性乳房炎を伴う初乳中のADA活性は炎症反応により活性値が上昇するため,乳房炎診断を同時に行う必要性が考えられた.リンパ球幼若化能とADA活性値の明らかな相関は見出せなかったが,初乳中のADA活性値は乳汁中のリンパ球,とくにCD4+T細胞機能を反映することが推測され,簡便なリンパ球系細胞の免疫能評価に応用できる可能性が示唆された.
著者
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佐藤 雅彦
Department Of Cardiovascular Medicine Public Soma General Hospital
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安田 準
Department of Clinical Veterinary Medicine, Faculty of Agriculture, Iwate University
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岡田 啓司
Department of Clinical Veterinary Medicine, Faculty of Agriculture, Iwate University
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岡田 啓司
Department of Veterinary Medicine, Faculty of Agriculture, Iwate University
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今西 晶子
Department of Veterinary Medicine, Faculty of Agriculture, Iwate University
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佐藤 雅彦
Department of Veterinary Medicine, Faculty of Agriculture, Iwate University
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