冠動脈バイパスを伴う弓部置換術の手術成績
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概要
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【目的】胸部大動脈疾患に冠動脈疾患は高率に合併し,冠動脈疾患の重症度は予後に大きく影響する.当科における弓部置換術とCABGの同時手術の手術成績を報告する.【方法】2005年1月から2011年12月までに単一術者が施行した弓部置換術のうち,緊急例を除いた82例を対象とした.CABG同時手術群(A群)と弓部置換単独群(B群)に分けて比較検討した.術前冠動脈造影で75%以上の狭窄を有意狭窄としCABGの対象とした.手術は全例胸骨正中切開で行い,4分枝付き人工血管を使用した.【結果】A群は31例,B群は51例,両群間の術前状態に差は認められなかった.A群の平均バイパス吻合数は1.7±0.8枝で,使用グラフトは左内胸動脈17本,右胃体網動脈1本,大伏在静脈24本であった(重複あり).術中成績は(A群vs B群),手術時間(356分vs 252分),人工心肺時間(192分vs 146分),大動脈遮断時間(112分vs 86分),選択的脳灌流時間(120分vs 84分)と差が出たが,グラフト採取や吻合時間を考慮すると妥当と考えられた.周術期心事故は両群間に有意差を認めず,術後主要合併症(出血再開胸,脳梗塞,新規透析導入,縦隔炎,長期挿管,院内死亡)でも両群間に差は認めなかった.【まとめ】弓部置換術施行症例の高率に冠動脈疾患は合併していた.TARとCABGの同時手術は安全に施行でき,周術期心事故の予防を考慮すると積極的に同時手術は行うべきと考えられた.
著者
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鈴木 友彰
Division of Cardiovascular Surgery, Shiga University of Medical Science
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木下 武
Division of Cardiovascular Surgery, Shiga University of Medical Science
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高島 範之
Division of Cardiovascular Surgery, Shiga University of Medical Science
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畔柳 智司
Division of Cardiovascular Surgery, Shiga University of Medical Science