地熱井変質データベースの構築と事例 6 地域のモデル化による多様な変質環境の検討
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概要
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新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の地熱開発促進調査で掘削された調査坑井の変質データについて,(1) 幅広く高度な利用に資する電子データベース化を試みるとともに,(2) 事例 6 地域について各種の図表化処理を行い,概念的モデル化を通じて変質環境の多様性とその原因を検討した. (1)坑井変質データのデータベース化では,九州14地域,本州21地域の各報告書について,表計算ソフト(Microsoft社のExcel)を用いて坑井(合計271本)毎の深度-変質鉱物分布データを電子表に整理した.しかし,地熱開発促進調査では変質鉱物の分析・表示の方法・仕様が調査地域によって大きく異なっているためデータの総合的な整理が難しく,また北海道17地域などについては未作業のため,データベースの一般公開化には今後かなりの年月を要する.本報告では,環境特性の指示性が高い変質鉱物16種について,坑井毎の存在度を一覧表に整理するとともに,地域毎の存在度を広域地図上に比較表示して,変質の地域間比較検討を予察的に行った. (2)事例地域の変質環境の概念モデル化では,高温2地域として「阿蘇山西部」(熊本県),「八丈島」(東京都),また比較的低温の4地域として「菱刈」(鹿児島県),「本宮」(和歌山県),「王滝」(長野県),「最上赤倉」(山形県)を対象とした.地域毎に坑井検層(温度・地質・変質)データについて,代表的な坑井の個別柱状表示図,横並び柱状表示図,地図上柱状表示図を,地質調査総合センター(2007)の数値地質図GT-3の坑井検層データ処理用プログラム群を使用して作図した.これらの図に基づく6地域の概念モデル化の結果は,様々な原因(地域的な熱源や熱水系の分布・特性,地形・断裂系・岩質分布に規定された不均一な透水構造,気液分離現象に伴う化学的な分化過程など)によって,低温でも多様な変質帯が分布しており,変質調査が非火山性地域の地下環境の把握についても有力な手段となることを示している. 上記の作業と検討は,放射性廃棄物地層処分に係わる「熱・熱水の影響評価手法に関する研究(2003-2005年度)」の一環として実施したものである.地層処分可能性地域の調査において,変質調査は過去-現在-未来の熱・熱水環境の解明・評価などの目的で重要であり,上記の検討結果は基礎的な情報としての有効利用が期待される.また,変質情報は様々な地圏分野(資源開発,環境保全,災害防止,地下空間利用など)で重要であり,基盤的な地球科学情報の一つとして,熱水変質のみならず,熱変質(変成),続成変質,風化変質などに関する総合的な電子データベースが今後整備されて,容易に幅広くまた高度に利用可能となることが望まれる.