合成吸着樹脂を用いた地下水腐植物質の採取と特性分析
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概要
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深度約 50 mの地点より地下水を採水し, 地下水の中に溶存している腐植物質を合成吸着樹脂による濃縮法等により採取した. 採水した地下水および地下水から採取した腐植物質ならびに参照試料とした標準腐植物質の種々の特性データを取得し, 比較検討を行った. 標準腐植物質としては, 標準的な水中腐植物質であるNordic腐植物質および石炭等から抽出・精製された代表的試薬であるAldrichフミン酸を用いた. 未処理の地下水に含まれる腐植物質と濃縮・精製後の腐植物質の比較では, 腐植物質の特性を知るために重要と考えられた紫外可視吸収スペクトル, 三次元蛍光スペクトルおよびフミン酸/フルボ酸濃度比を調べた. また, 地下水腐植物質については, 核種移行への影響評価に重要な錯生成の観点から, 分子量分布, 赤外吸収スペクトルおよび核磁気共鳴スペクトルをNordic腐植物質と比較した. この結果, 濃縮精製後の腐植物質が地下水中の腐植物質と類似した特性を示すこと, および錯生成に寄与する酸性官能基を有する, アメリシウム (Am) との錯生成において腐植物質の分子量によらず一様に錯体を形成するなどの点でNordic腐植物質と同様の特性を有することが示唆された. これらの結果は, 本実験で用いた濃縮法を含む一連の方法は, 地下水中の溶存腐植物質の特性を損ねることなく採取する際に有効であること, ならびにわが国の地下水中の溶存腐植物質が, 金属イオンとの錯生成において, 既往の多くの研究で用いられている水中腐植物質の標準物質として国際腐植物質学会より配布されているNordic腐植物質と類似の特性を持つ可能性を示唆するものである.
- 一般社団法人 日本原子力学会 バックエンド部会の論文
著者
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上田 正人
Tokai Research and Development Center, Japan Atomic Energy Agency
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坂本 義昭
Tokai Research and Development Center, Japan Atomic Energy Agency