胸部X線写真の残像を利用した比較読影の検討
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概要
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目的:胸部正面単純直接X線写真(胸部X線写真と略す)は,通常2枚の写真を横並びに表示して比較読影を実施しているが(従来法と略す),当保健予防センターでは,フィルムレス環境において,読影ワークステーションで素早いホイールスクロールによるページングにより生じる残像を利用する比較読影を主に実施している(残像法と略す).このたび,両者を比較検討し残像法の有用性が認められたので報告する.方法:2011年1月から2月にかけて,読影ワークステーションNV-1000(日立メディコ,東京)を使用して,胸部X線写真20症例を医師20名が従来法と残像法により比較読影した.結果:医師による残像法の感度は0.945で従来法に比べ約1.5倍,陽性尤度比は15.8で約1.8倍に増加し,陰性尤度比は0.06で約0.14倍に減少し,偽陰性率は約85%減少した.特異度や読影時間にはほとんど差がなかった.pool法によるROC解析では,明らかな有意差が認められた.結論:残像法は従来法に比べ胸部X線写真の比較読影において明らかに優れていることが判った.撮影時の再現性の確保等に若干の課題があるが,撮影方法の工夫や読影ワークステーションの機能充実等により課題が克服され,精度のさらなる向上が期待できる.今後,本技術が健診や臨床現場で広く導入され,肺がんの早期発見のみならず,様々な疾患の早期発見や経過観察等において,その精度向上に寄与することが期待される.
著者
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斎藤 誠一郎
Masuda Medical Association Hospitall, health prevention center
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山田 和幸
Masuda Medical Association Hospitall, health prevention center