基礎医学から見た抗加齢医学
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概要
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老化は遺伝子と環境因子により複雑に制御されている。そのため多くの老化の説が考えられてきた。その中で、エネルギー代謝とその副産物である活性酸素が老化と深く関わっていることが明らかになってきた。活性酸素が細胞構成成分に傷害を与えて、細胞障害を起こし、組織・器官が機能低下することで個体老化が促進する。これに対して生物は抗酸化機構を発達させてきた。生物の個々の寿命は活性酸素の発生量とこれに対する防御能力のバランスにより決定されていると考えられるようになってきた。この老化のメカニズムは多くの生物で共通に見出され、ヒトの正常老化や老年性疾患にも深く関与している。エネルギー代謝に関連したカロリー制限や抗酸化の研究は抗加齢の可能性を示唆したことから、一般社会からも大きな注目を集めるようになってきた。しかし、それはまだ実験動物レベルの段階であり、ヒトで実証する必要がある。 65歳の日本人女性の平均寿命は88歳に達しており、病的老化である「ガン」「脳血管障害」「心臓血管障害」の三大疾患が克服されると95歳近くまで平均寿命が延長すると言われている。それでもヒトの最長寿命である120歳には及ばないことから、そこに存在する生理的老化のメカニズムを明らかにする必要がある。抗酸化剤やカロリー制限が病的老化と生理学的老化のどちらに関与しているのかをヒトで明らかにし、病的老化の克服はもちろん、生理学的老化(生物学的老化)の制御を目指すことが、真の「抗加齢研究」であると考える。