抗凝固療法中卵巣出血をきたした先天性心疾患術後女性の2例
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概要
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はじめに: 抗凝固療法中の出血合併症には, 軽微なものから致命的なものまでさまざまである. われわれは先天性心疾患術後, ワルファリン内服中に卵巣出血をきたした成人女性2例(うち1例は重篤化)を経験した. 抗凝固療法中に有症状化した卵巣出血の報告は稀であり, 文献的考察を加えて報告する.<BR>症例1: 23歳, 女性. 僧帽弁置換術後. 強い腹痛を主訴に来院した. 頻脈, 血圧低下および腹膜刺激症状を認めたが発熱はなかった. 問診, 腹部エコーおよび腹骨盤部造影CTにて卵巣出血と診断した. 貧血を認め, PT-INRは著明に延長し, 腹腔内出血は2,000mL近くと推測されたが, 新鮮凍結血漿およびビタミンK投与により保存的に回復した.<BR>症例2: 27歳, 女性. Fontan型手術後の単心室症例. 心房細動に対しワルファリン内服中であった. 腹痛を主訴に産婦人科を受診し, 腹部エコーにて卵巣出血と診断された. 貧血は認めず血圧も安定しており, 投薬なしで腹部エコー上の増悪傾向もなく軽快した.<BR>結語: 卵巣出血は急性腹症として発症し, 緊急開腹術が必要となる場合もある. 抗凝固療法中に生殖可能年齢の女性が腹痛を訴えた場合, (1)卵巣出血も念頭において鑑別していくことが重要であり, (2)卵巣出血と診断された場合にはその重症化にも留意して経過を観察していく必要がある.
- Japan Heart Foundationの論文
著者
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久持 邦和
Department of Gynecology Cardiovascular Surgery, Hiroshima City Hospital
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木口 久子
Department of Pediatric Cardiology, Hiroshima City Hospital
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石口 由希子
Department of Pediatric Cardiology, Hiroshima City Hospital
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鎌田 政博
Department of Pediatric Cardiology, Hiroshima City Hospital
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中川 直美
Department of Pediatric Cardiology, Hiroshima City Hospital
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依光 正枝
Department of Gynecology, Hiroshima City Hospital
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大庭 治
Department of Gynecology Cardiovascular Surgery, Hiroshima City Hospital