透析患者の虚血性心疾患に対する治療戦略:—PCI or CABG?—
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概要
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背景: 慢性透析患者は虚血性心疾患の合併率が高く, 予後も悪いことが知られている. 冠動脈疾患を有する透析患者に対する経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention; PCI), 冠動脈バイパス術(coronary artery bypass graft; CABG) それぞれの予後に関する報告は散見されるが, それぞれの予後を比較検討した報告は少ない. 今回われわれは, 慢性透析患者に対するPCIとCABGの慢性期臨床成績に関して比較検討を行った.<BR>方法: 1998年1月より2007年7月までに当院で施行された慢性透析患者に対するPCI施行群63症例と, CABG施行群24症例を対象とし, 両群の慢性期開存率, 再血行再建率, 総死亡率を比較検討した.<BR>結果: 平均観察期間はPCI群で386±447日, CABG群で282±416日と差がなく, 病変枝数はCABG群で有意に3枝病変が多く1枝病変が少なかった(PCI vs CABG: 1枝28.5% vs 4.1%(p=0.01), 2枝30.2% vs 29.2%(p=0.93), 3枝41.3% vs 66.7%(p=0.03). また左主幹部症例はPCI群で3例(4.8%), CABG群で8例(33.3%)(p<0.01)と, CABG群で有意に多かった. フォローアップ冠動脈造影を施行できたのがPCI群33症例(52.4%), CABG群22症例(91.7%)で, うちPCI群17症例(51.5%)に75%以上のステント内再狭窄, CABG群6症例(27.3%)に75%以上のグラフト再狭窄を認め(p=0.08), グラフトの再狭窄率は低い傾向にあった. 再血行再建率, 心筋梗塞発症率, 総死亡率はそれぞれ20.6%: 12.5%, 3.2%: 0%, 17.5%: 16.7%(PCI群: CABG群)であり, 両群間に有意差を認めなかった.<BR>結語: 透析患者の虚血性心疾患に対する治療戦略において, CABGはPCIと比較して, 特に再血行再建率, 心筋梗塞発症率に関してCABG群で低い傾向にあったが, 総死亡率に関しては双方で有意差を認めなかった.
著者
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松野 俊介
Department of Cardiology the Cardiovascular Institute
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桐ヶ谷 肇
Department of Cardiology the Cardiovascular Institute
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永島 和幸
Department of Cardiology the Cardiovascular Institute
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中村 通也
Department of Cardiology the Cardiovascular Institute
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中川 裕也
Department of Cardiology the Cardiovascular Institute
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及川 裕二
Department of Cardiology the Cardiovascular Institute
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矢嶋 純二
Department of Cardiology the Cardiovascular Institute
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船田 竜一
Department of Cardiology the Cardiovascular Institute
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稲葉 俊郎
Department of Cardiology the Cardiovascular Institute
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小笠原 憲
Department of Cardiology the Cardiovascular Institute
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澤田 準
Department of Cardiology the Cardiovascular Institute
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相澤 忠範
Department of Cardiology the Cardiovascular Institute