損害保険料率規制の転換:-保険市場の情報問題からの一考察-
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
損害保険料率規制は,自由化を経て事実上の統一料率市場から,使用可能なリスク指標などに一定の制限を設けた事前認可制へ移行した。公的規制には,市場の不完全性を緩和する役割が期待されるが,保険市場に関しては情報問題の縮小がとくに重要となる。すなわち,保険規制には,保険カバーの価格・質,保険会社の支払能力,そして被保険エクスポージャのリスク水準などに関する情報の不完全性を緩和することが求められる。損害保険料率規制の変化を,このような情報問題との関連で見れば,その目的が,競争抑制による保険会社の支払能力の確保から,一部の高リスク者に対する価格抑制による保険の購入可能性の維持に主眼を置いたものへと転換したと見ることができる。いっぽう保険商品の多様化により,保険カバーの質に関する情報不均衡は,一層拡大し市場効率性を損なっているおそれがあり,保険会社間の協調など何らかの体制整備が求められる。