幼児の記憶に及ぼす有意味化の効果
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概要
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本研究では,幼児の記憶の発達過程における有意味化の効果について,4歳から6歳の幼児を対象として二つの実験を実施した.実験1では,年齢差における有意味化の効果の違い,および幼児の日常場面を描写した絵と物語は,有意味化を促し想起を促進するのかどうかを検討した.その結果,第一に,年齢に伴って想起成績が向上すること,第二に,項目間に関連のある絵を提示した場合および絵とともに物語を提示した場合に,場面の有意味化が促され,想起成績が向上することが示された.さらに,プロトコル分析の結果,5歳半過ぎから自発的に場面を有意味化して想起していることが示された.実験2では,項目が整合的に配置されていない場面を用い,5歳半以前の幼児に有意味化を促すことで想起成績が向上するのかどうかを検討した.その結果,有意味化するよう教示することで,場面全体を有意味化することは困難であるものの,5歳半過ぎの幼児と同等まで想起成績が向上することが示された.したがって,事象に対して有意味化しようと能動的に働きかけることが,想起の促進には重要であることが見いだされた.
著者
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吉野 さやか
Graduate School of Humanities and Sciences, Ochanomizu University
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内田 伸子
Ochanomizu University