弛緩部型真珠腫における進展度分類と聴力成績の検討
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概要
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われわれの施設では, 弛緩部型真珠腫に対しては2つの基本的な考えに基づいて手術を行っている. 一つはできるだけ生理的な形態の保持と機能維持を図ることであり, 可能な限り外耳道後壁を保存し, かつ中耳腔粘膜の保存に努めることである. もう一つは, 丁寧に真珠腫母膜に沿って剥離除去し, 母膜の連続性を保ち除去することである. 真珠腫母膜の破綻時には段階手術とし, 再発の確認を行うこととしている.今回, 日本耳科学会より報告された中耳真珠腫進展度分類2010改訂版案に基づいて弛緩部型真珠腫の初回手術例の病態を分類し, stageごとにおける手術成績について検討を行った.対象は2006年1月から2008年3月までの間に, 大阪赤十字病院耳鼻咽喉科で弛緩部型真珠腫の診断で初回手術を行った238耳である, 年齢は4歳から79歳 (平均年齢49.8歳), 男性123耳, 女性115耳であった.stageごとの内訳はstage Iが38耳 (16.0%), stage IIが155耳 (65.1%), stage IIIが45耳 (18.9%) であった.進展度別の術後聴力成績は, stage Iでは97.4% (38耳中37耳), stage IIでは78.7% (155耳中126耳), stage IIIでは60.0% (45耳中27耳) であり, 進展度分類は妥当なものと考えられた.また, 遺残性再発率は2.5% (238耳中6耳) であり, 再形成再発率は4.2% (238耳中10耳) であり, 他施設と比較しても遜色のない良好な結果であり, われわれの施設での術式選択や手術方法に関して, 妥当な判断・方法であると考えられた.
著者
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吉田 尚生
Department of Otorhinolaryngology, Kansai Electric Power Hospital
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隈部 洋平
Department of Otorhinolaryngology, Head and Neck Surgery, Osaka Red Cross Hospital
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和田 忠彦
Department of Otorhinolaryngology, Kansai Electric Power Hospital
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岩永 迪孝
Department of Otorhinolaryngology, Kansai Electric Power Hospital
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白馬 伸洋
Department of Otorhinolaryngology, Head and Neck Surgery, University of Ehime
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平塚 康之
Department of Otorhinolaryngology, Head and Neck Surgery, Osaka Red Cross Hospital
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藤田 明彦
Department of Otorhinolaryngology, Kansai Electric Power Hospital