維持透析中の糖尿病を伴う高齢者のせん妄にペロスピロンが著効した2例
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
症例1は83歳,女性.腎硬化症・クリオグロブリン血症に伴う慢性腎不全のため,血液透析導入となる.腰痛を主訴に入院した2病日目より極度の精神運動興奮を伴うせん妄状態となるも,セロトニン・ドパミン受容体拮抗薬のペロスピロン(ルーラン<SUP>®</SUP>)内服により速やかに改善した.症例2は77歳,男性.急速進行性糸球体腎炎を原疾患とする慢性腎不全のため,血液透析導入となる.維持透析継続目的の入院4か月後よりせん妄状態が遷延していたが,入院10か月目よりペロスピロン服用開始したところ,徐々にせん妄が軽快した.両症例とも糖尿病を合併しており,ペロスピロンをせん妄の治療および再発防止目的で継続投与したが,薬物の蓄積による過鎮静・錐体外路症状・嚥下障害といった副作用もなく,安全に維持透析を継続することができた.ペロスピロンは血糖を変動させないため糖尿病患者にも安全に使用できる.ほかにも半減期が短い,他剤に比べて腎排泄性が比較的低い,主代謝物にほとんど活性がない,弱いながらも鎮静作用をもつといった薬理学的特性がある.以上の特性により,ペロスピロンは糖尿病を伴う維持透析中の高齢者のせん妄の治療に最適な非定型抗精神病薬であると考えられた.ただし,適応外投与であるので本人および家族によく説明し,定期的に状態を観察することが必要である.
著者
-
伊藤 千裕
東北大学医学部精神医学教室
-
小野寺 謙吾
岩切病院内科
-
大内 雄太
岩切病院心療内科・精神科
-
藤倉 恵美
宏人会木町病院内科
-
金井 秀明
岩切病院内科
-
中嶋 俊之
岩切病院内科
-
伊藤 千裕
東北大学医学部大学院医学系研究科精神神経学分野
関連論文
- メタンフェタミン逆耐性現象形成後におけるヒスタミンH_1受容体mRNA量の変化について
- フェンサイクシン投与ラットにおけるSerial Analysis of Gene Expression法による新規遺伝子発現の検索
- 実験精神病モデルを用いた難治性分裂病の成因研究 : 脳ヒスタミン神経系の関与について
- SS-3 異なる発作段階における獲得けいれん準備性の程度と苔状線維の発芽 : 扁桃核キンドリングでの検討
- D-16 扁桃体キンドリングラットにおける脳内ヒスタミン神経系の変化
- 維持透析中の糖尿病を伴う高齢者のせん妄にペロスピロンが著効した2例